CM54無料配布(砕牙×兼一②)ss

↓今年の夏コミの分(砕牙×兼一②)
ぱくぱく。

もぐもぐ。

ごっくん!

テーブルから溢れそうな量の料理が、流れるように小柄な体に吸い込まれていく。この程度の我儘で懐が心配になるような生活はしていないが、何というか…、少々意外だった。

「いやぁ~、よく食べるねえ。」

ついつい、「そんなに小さいのに」という率直な感想が伝わってしまったのか、若干尖った声で「成長期ですから」と返ってきた。

「それに…、」
「うん?」
「敵の兵糧を潰すのも立派な戦略だって岬越寺師匠が言ってました。」

にっこり。

「ハハハ…。」
思わぬ反撃を食らって、苦笑しか出てこない。半ば拉致に近い形で強引に連れて来られたというのにこれだけ豪快なき食いっぷりを披露してくれるのだから、伊達にあの化け物共の弟子はやっていないということだろうか。

もりもり。

砕牙が久しく会っていない親友や実の父親に思いを馳せている間も、少年の箸が止まることはない。そして、止まらないのは何も箸だけではない。

「それで、どこまで話しましたっけ?そうそう、いいところで長老が…、」

「DオブDで優勝したら、付き合っていいって言ったのに…!」

大人気ない老人への愚痴が止むことはない。兼一は(一応)自分に気を使って娘の話題を続けているらしいのだが、どのエピソードも最後はあの老人の話になってしまうのだ。

――全く、あのクソジジイ…。

我が父ながら、どこまでも腹の立つ男である。
「長老は昔いじめられっ子だったって言うんですけど、どーも嘘っぽいんですよね~。岬越寺師匠は単に周りから浮いてただけなんでしょうけど。」

――弟子に何デタラメ吹き込んでるんだ、あのジジイ…。

確かに秋雨はマイペースすぎて周囲から浮いていたようだが、(いつの時代であろうと)あの無敵超人をいじめられる人類など存在するはずがない(死んだ母なら可能かもしれないが)。

「まして、僕に似てるなんて有りえないって言うか…。」

独り言のような小さな呟きが、砕牙の胸に場何とも言えない想いをもたらす。

本人が言うように、一見この少年と風林寺隼人に類似点など認められない。けれど、根本的な処で似ているのだろう。あえて言葉にするならば、決して折れることのない信念が。現実に妥協することのない頑固さが。
 いっそ我儘とも言えるその頑なさは、身近で学んだところで身に着くものではない。似ているようでいて肝心の処で似ても似つかなかった息子としては、父の心の在り様はそう生まれついたからとしか思えなかった。

――だけど、そんな子供の理想論が、この先どこまでも通じるはずがないんだ。

無敵の名を欲しいままにする砕牙の父ですら、守ろうとする端から取り零している。どうしたって掌から零れ落ちるのに、落ち零れた過去すら諦めずに掬いあげようとするのだ。

――どうして分からないんだ。無理なんだよ。出来っこないんだ。いい加減…、諦めろよ。

あれほど強い人が、失うたびに傷ついていたことを知っている。知っていたから、言えなかった。言えずに今、此処にいる。この少年をこの場に留めて置いているのも、結局は同じことなのだろう。弟子には偉そうに「挫折が必要だ」なんて言っておいて。少しは妥協しろって思ってるくせに。

――見たくないんだ。現実に打ち砕かれる姿を。傷ついて欲しくない。

こんなことを考えている己こそが、大切な人たちを一番傷つけているのかもしれないけれど。



                             →完成したらサイトに続きが載ります。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

みねず あおい

Author:みねず あおい
日々の溜息と絶叫を綴っている日記(更新記録も此処)。史上最強の弟子や星矢Ωの感想を投下。最近はアンリミコミカライズの感想も書いてます。

旬の花時計
Twitter on FC2
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
過去のログ
淡々と百人一首
    ブログ翻訳
    ブログ内検索
    RSSフィード
    リンク