【エア新刊】Catch Me If You Can !【槍→弓】

 ちょっと夏原稿に行き詰って(エア新刊をエロ新刊に空目したため)支部でエア新刊をしてみたのでした。…良い気分転換になりましたので、すぐ本命に戻ります…っ。


↓こんなのです(一応upしとく)。真名バレとかしてないからFateはこれからって人でも大丈夫。

【エア新刊】Catch Me If You Can !【槍→弓】

<本体SIDE>

……つかれた。もうしにたい(いや死んでるけど)。
 赤茶けた地面に力なく手足を投げ出し、錬鉄の英霊はそっと目蓋を伏せた。目を開けたところで、見慣れ(飽き)た世界はちっとも目に優しくないのだから。かといって、目を閉じたところで安らかな夢など見られるはずもないが、焼けただれた空と墓標のような剣の群れを眺めているよりは幾分かましだ。
……今すぐ自分ごと世界が終わってくれないものか。摩耗が進んで座ごと一瞬で消滅するとか。何者かの攻撃で座が崩壊するとか。…前者はともかく、後者はないか。
 益体もない空想で己を慰めてはいるが、半ば本心でもある。もう二度と立ち上がらないで済むのなら、今この瞬間に綺麗さっぱり消滅して構わない。それほどまでに疲れ切っていた。――にも関わらず、戦場に馴れきった肉体は殺意に反応して跳ね起きていた。
「…!」
 焼けただれた空を裂いて、赤い閃光が大地を抉る。間一髪で直撃を避けると同時に、使い慣れた夫婦剣を投影して身構える。
「くっ…。」
 爆風で巻き起こった砂埃を突っ切り、ギラギラと輝く赤い双眸が彼を追いかけてきた。反射的に距離を取ろうと、突然の侵入者に向けて無数の剣を射出する。が、正体不明の敵影は飛来する凶器には目もくれず、がむしゃらに掴みかかってきた。
「チッ。」
 剣の一群が、男の全身に突き刺さる。投影品とはいえ、その一つ一つが宝具だ。相応のダメージがあるはずだが、全く怯む気配がない。血走った眼が、ただひたすらに追いすがる。
 常軌を逸した男の様子に、彼は方針を転換した。防御ではなく攻撃へ。距離を取るのではなく、敵の懐へ飛び込んでカウンター気味に首を狙った。
「なっ…。」
 本能だけで動いているように思われた男は、しかし必殺の一撃をわずかに身を逸らすことで躱した。首を狙った刃は男の肩に深く食い込み、彼の右手は掴んだ柄ごと握りしめられた。
「離せ!」
 喉を狙って振り上げた左の刃も、ギリギリで男の右腕に防がれる。骨まで届いた刃に構わず、男は蒼い髪を振り乱して突進してくる。その勢いのまま、彼は荒れ果てた地面に押し倒された。
「この…!」
 男に組み伏せられた体勢で、その背に剣の雨を降らす。針鼠のように剣を生やしたまま、血まみれの男は彼を見下ろした。
「ようやく、捕まえたぜ…。アーチャー…ッ。」
 男の眼には、単なる怒りや殺意では片付けられない様々なものが煮えたぎっていた。
「…?…誰だ貴様は。」
 だが、彼の方は、こうして至近距離で顔を突き合わせても男の正体に思い当たらなかった。
……知らんぞ、こんな危ないヤツ。
 彼が漏らした素直な言葉は、意図せず男の狂気を煽ったらしい。血で汚れた白い顔は引きつり、赤く光る眼光は禍々しさを増した。
「随分な言い草じゃねーか。…分霊の戯言なんざいちいち記憶する価値もねえってか?」
「分霊?」
 ミシリ、と掴まれた腕から骨の軋む音がした。痛みに眉をひそめながら、鈍色の瞳で男を睨み返す。訳が分からないが、少なくとも、彼の方にこのような暴行を受ける心当たりは全くないのだから。
「ああそうだろうよ!お前はいつも、俺が何をしようが言おうが、どーでもいいってツラしやがって…ッ。」
「待て、何を言って…!」
「座に帰れば消えるだけの亡霊が何を想おうと意味はないってぬかしたよなぁ?…お前になくても、俺にはあったんだよ!」
「落ち着け、話がさっぱり、」
「俺(分霊)の意思はここにある!」
「だから…!」
 何とか男を宥めようとするも、逆上した相手は聞こうともしない。むしろ、彼が口を開くたびに一人でヒートアップしていく。
「お前(分霊)の中に残らないってんなら、お前(本体)に刻んでやるよ!二度と忘れないように…俺の印をなっ!!」
 宣言と共に、男が彼の喉元を噛み千切った。


<分霊SIDE>

 数メートル先に実体化した気配を、あえてアーチャーは放置した。熱の籠った視線は若干うっとうしくもあるが、わざわざこちらからアクションを起こすほどではないし、用もないのに声をかけてやるほど親切にしたい相手でもない。
「……。」
「……。」
五分経過。

「………。」
「………。」
 十分経過。

 微妙な緊迫感に、先に根を上げたのはランサーの方だった。
……堪え性のない犬だな。待てもできんとは。
 面白くない、という顔を隠しもせず、ランサーが近づいてくる。そのむすっとした表情を横目で一瞥すると、アーチャーは視線を正面に戻した。
「ホント陰険なヤローだな。…気付いてるんなら、挨拶くらいしろっての。」
 一言もなかったのはお互い様である。まして、アーチャーは用もないのにランサーに構ってやるほど暇ではない。例え、現在進行形で緊急性を伴う事案を抱えていなかったとしても、ちょくちょく聖杯戦争で顔を合わせる程度の知り合いの内面を積極的に慮ってやるほど、アーチャーも余裕のある人間ではなかった。欲を滲ませた視線で己の全身を舐めるように眺めまわす相手ならば尚更。
「おい、何とか言えよ!俺一人で喋ってたらバカみてえだろっ。」
 伸ばされた腕を、半歩引いて肩に触れる寸前で躱す。なおも追いすがってきたので、今度は片手で払いのけた。その汚いものを払うような仕草が勘に障ったのか、ランサーがギャンギャン文句を言ってくる。本格的にうざったくなってきた。
「用があるならさっさと言え。ないなら消えろ、うっとうしい。」
 不機嫌を隠そうともしない声に、ランサーが一瞬怯む。冷え切った灰銀の瞳は、ランサーの腹の底まで見透かすようだ。
「いや、その…。」
 口ごもったランサーは、感情を表さない、なのに意思だけは色濃く映し出す眼差しから気まずそうに目を逸らす。けれど、視線は未練がましくアーチャーから離れない。月に照らされて銀に見える白い髪と同色の睫毛、触れると意外に柔らかい唇、首から肩、背中へと続く見事なラインへとランサーの視線は下降し、驚くほど細いウエストから聖骸布で隠された臀部、太腿から足首を彷徨い、またアーチャーの顔に戻ってきた。恐らく、脳内では堂々と口に出すのを憚られるような妄想が繰り広げられているのだろう。
「あー、その、…手合せとか?」
 欲で濁った双眸で全身舐めまわしておいて、手合せ?殺しに来た、と言われた方が不快指数は上昇しなかっただろう。
「断る。貴様と戦ったところで何のメリットもない。魔力と時間の無駄だ。」
「そ、れなら、俺が…。」
「それも断る。そもそも、戦わなければ魔力を補給する必要もない。」
 同じ男から向けられる、未練がましい視線は不愉快この上ない。たかが一度、必要に駆られて肌を重ねたくらいで情人扱いされるのは業腹だ。…だが、各上の英霊サマの、惨めな執着と思えば。
「はっきり言おうか、英雄殿。一度魔力補給されたくらいで、貴様なんぞに二度目も足を開くと思われるのは心外だ。」

――その恋情を容赦なく踏みつけてやるのは、なかなかに気分が良かった。





 貴様なんぞ願い下げだと――、はっきり拒絶されることは、十分予想の範囲内だったがそれでも辛かった。そんな風に思う資格は自分には無いというのに。
 一方的にアーチャーのプライドを傷つけたのはランサーの方だ。弱った相手へ親切ぶった魔力提供などただの建前。堂々と口説いたならともかく、自分の気持ちを認めないまま魔力供給を名目に強引に手に入れたのだ。勿論、弱っているからといって黙ってされるがままになるようなアーチャーではなかったが。
男に組み敷かれるくらいなら貴様の腹をかっさばいて腸を啜ってやると言い放ち、実際ランサーは危うく――無理やり――切腹させられるところだった。内臓とまではいかなくとも、骨に届く斬撃を何度か受けて、何とか本懐を遂げた時には両者共血まみれ。もう少しアーチャーが粘っていたら、彼は魔力の補給が間に合わず座に帰っていただろう。
 そんな燦燦たる有様にも関わらず、アーチャーが初めてだと覚ったランサーは喜んだ。歓喜して彼を犯した。
 あの瞬間、アーチャーの鋼色の瞳に映っているのはランサーだけで。ランサーには、アーチャーだけで。底なし沼に嵌るような、腹の底まで満ち足りるような、幸せな時間だった。
…その結果、アーチャーからろくに目も合わせてもらえなくなったのだけれども。
 だから、これは自業自得。上の空だった相槌が絶対零度の無視に変わり。どうでも良いその他大勢を見る目が塵を見る目に…いや、視界にも入れてくれなくなった。…思い返せば、ろくな扱いをされてこなかったが、それでも――人間として最低レベルとはいえ――まだリアクションがあった。あの頃が懐かしい。もう皮肉でも罵倒でも罵詈雑言でもいいからあの声が聴きたい。光を照り返すようなあの瞳に、自分を映してほしかった。

――そうだ、告白してみよう。
 よくよく考えてみなくても、ランサーの行動は完全に順序が逆だった。生前育ったお国(時代)柄、また本人の気性ゆえに、これはと思う相手に取りあえず(性的・物理的に)襲いかかってみたのがそもそもの間違いなのだろう。同じ英霊、同じサーヴァントという気安さから、つい体育会系丸出しの肉体言語でがっついてしまったが、相手はその独特なカラーリングに相応しく、内面も随分と毛色が変わっているようだ(だからこそどうにも気になって仕方ないのだが)。真名どころか出身国すら杳として知れないものの、立ち居振る舞いからランサーより相当後の時代――たった今現界している現代に近い時代――の英霊ではないかと思えた(散々野蛮人とか石器時代人とか罵られたし)。
何かと厄介事を押し付けられる同僚(小さい方)からもこの時代の人間は繊細(ナイーヴ)なんですよ、とか同意のない性交渉は犯罪です、などと躾のなってない犬を見る目で言われたばかりだったりする。やはり、意思確認は必須と見るべきだろう。…アーチャー本人ならともかく、赤い悪魔に成敗されるのは避けたい。
――面倒くせえ。けど、仕方ねえ。
 ただ芸もなく突撃するだけで、手に入るような容易い相手ではないのだから。
 尤も、ただ好きだと叫んだところで、今更アーチャーの好感度が上昇するとも思えない。こちらの思惑(下心)など、改めて言うまでもなく見透かされているに決まっている。大体、犯ってから誠実さをアピールしても白々しすぎるだろう。
――だからって、何もしなかったら何も変わらねえ。
 脈がないからハイそうですか、と諦めるようなら、今頃ランサーは英霊になどなっていない。どうせアーチャーの心証はどん底なのだ。これ以上落ちることはないと開き直ってアタックするのみである。







※ちょっと解説しておくと、この槍と弓はちょくちょく聖杯戦争で顔合わせてるけどアーチャーの真名とか知らない状態で、ランサーの方は謎のサーヴァントであるアーチャーが気になってしょっちゅう絡んでるんだけどアーチャーの方は自分いじめで忙しくランサーどころじゃない。生前槍でハートキャッチ(物理)されたことも覚えてないくらい。ランサーが自分に気があるのは一目瞭然だったので、余裕がないところにギャンギャン吠えられてイラッとくるたび冷たくあしらって八つ当たりをしていました。どうせ座に帰ったら分霊の記憶は本体に引き継がれないし、記録を読んだとしてもランサーが自分の座まで来るのは無理だろうと高をくくって。ところがどっこい!溜まりに溜まったフラストレーションが限界を越え、本体ランサーが何も知らない本体アーチャーを襲撃したよ本体可哀想だけどある意味自業自得だよねっていう。

関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

みねず あおい

Author:みねず あおい
日々の溜息と絶叫を綴っている日記(更新記録も此処)。史上最強の弟子や星矢Ωの感想を投下。最近はアンリミコミカライズの感想も書いてます。

旬の花時計
Twitter on FC2
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
過去のログ
淡々と百人一首
    ブログ翻訳
    ブログ内検索
    RSSフィード
    リンク