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君去りし後(士→弓→←凛) (1)

このままでは九月のブログが0件になってしまうので、慌ててFateの小話をup。これ書き始めたのシャーロットの7話みた直後なんだけどね…。まあ大事なご主人様を喪ってボロボロになるアーチャーとか見てられないけど萌えるよね!弱った隙に士郎に手込めにされたりしたら尚良いよねって(同じような理由で六花のアドレットにも悶えている)。一応この話はメリバとトゥルーエンドがあります。ハッピーエンドはないです。
『君去りし後』(士→弓→←凛) (1)


 …遠坂凛が死んだ。

 あんなにも生命力に溢れた、殺しても死にそうにない現代の魔女が、あっけなく。
 人が死ぬのは嫌というほど見慣れていた。それが知り合いの――師匠の死であったとしても、今更心底取り乱すことはない。何も感じないほど心が死滅してはいないが、ただ死んだ人間はもう其処にいないのだと、自然に受け入れることができる。それが衛宮士郎という人間だ。

 …それは、かつてのアイツも同じだったはずなのに。

 遠坂のサーヴァントであった男は、主の死が誰かの、何かの陰謀ではないかと周囲を疑い、躍起になって犯人を探し回り、…やがて彼女の死が純然たる事故によるものだと――誰も責めることができないと悟ると、力無く項垂れ、彼女の遺体から離れなくなった。
『貴様は度し難い愚か者だが、凛が目を光らせている限り、そうそう道を誤ることもあるまい。せいぜいマスターの慈悲深さに感謝するのだな。』
事あるごとに己がマスターを持ち上げつつ士郎を扱き下ろしていた男は、今にも消えそうな儚さで、ただ主の棺に寄り添っている。その姿は、ただじっと待っていれば、眠っている主人が目を覚ますと信じているかのようだ。
――ばかやろう…。遠坂がいなきゃ駄目なのは、俺じゃなくてお前じゃないか…!
 男は魔術刻印の移植のため、腐敗が進まないように遠坂邸に安置された遺体の手を取り、聞き取れないほど小声で囁き続けている。どんなに握りしめたところで、冷え切ったその手が温もりを取り戻すことなどありはしない。それが分からない男でもなかろうに。
 冷たくて動かないまっとうな死体と、温かくて生きているかのように動けるのに動こうとしない死人。二人の姿は、彼女が生きていた頃と大差なく士郎の心を蝕んだ。

 魔術師遠坂凛の不肖の弟子である衛宮士郎にとって、仲睦まじく佇む主従を見かけることはよくあること。嫌でも見慣れてしまった光景で、見飽きたと言っても良いはずなのに、気が付けば士郎の目はいつもあの二人に吸い寄せられていた。
 軽口を叩きながら主の世話を焼く男は実に楽しげで、その眼差しはいつだって温かい。主に捧げる愛情が目に見えるようだった。
 男の献身を当前のように――けれど嬉しげに――受ける彼女は、士郎の視線に気付くと何時だって悪戯っぽく微笑んだ。魔女というには悪意なく、天使と称するには二心のある、彼女特有の魅力的な笑顔で。
『いいでしょ?でもあげないわよ。』
 彼女の目は、間違いなくそう言っていた。
 それはそうだろう。彼女は出来の悪い弟子に親身になって指導してくれたし、友人としても懇意にしてきた。けれど、サーヴァントは子供の玩具でもペットでもない。使い方次第でとてつもない災厄を招きかねない強力な存在で、その維持には少なからぬ魔力と知識が必要だ。そのどちらも士郎一人では心もとなかったし、そうでなくとも、あれほど彼女に心酔している男が他の人間を主と認めるはずがなかった。何より、彼女にとって男はただのサーヴァントではない。苦楽を共にした戦友であり、かけがえのない家族だった。誰かに譲ったりできるような軽い存在ではないのだ。
 彼女はどんなコストを払っても(サーヴァントとしては男の維持費は比較的少ない方だったが)男を一生養うつもりだったし、男も彼女が死ぬまで付き合うつもりだった。その為の――彼女の肉体が衰え、魔力の行使に支障が出た時の為の――準備も始めていたはずだ。縁起が悪いというより、随分と気が早いものだと思ったものだが。


「アーチャー。」
 跪く後姿に声をかけるが、男が振り向く様子はない。この距離で聞こえないはずがないし、そもそもサーヴァントがたかが人間の気配を察知できないはずもない。要するに、認めたくないのだ。主との別れを。
「先輩、もう少し待ってあげても…。」
「もう十分待っただろう。魔術で腐敗を抑えるといっても、永遠に保つわけじゃないんだ。…魔術刻印の移植には、少しでも早く施術するにこしたことは無い。そんなこと、分かっているだろう、アーチャー。」
「……。」
 葬儀そのものは――男が犯人探しに駆けずり回っている間に――既に済ませているので、遠坂の魔術刻印を妹である桜に移植したらそのまま火葬する予定だった。刻印の移植という言わば大手術の後では、遺体の腐敗を防ぐことはさらに難しくなるし、第一そんなことをしても何の意味もない。息を吹き返すことのない遺体をただ保存するなんて悪趣味なだけだ。…それに、きっと、アーチャーの精神にも良くない。
 ずっと小さな手を握りしめていた大きく武骨な掌は、士郎が触れると静かに主から離れた。
「凛…ッ。」
 足音もなく立ち去る男は、士郎に涙ひとつ見せることはなかったが、微かな囁きには確かに濡れた響きが混じっていた。



「アーチャーさん…。」
「……。」
 酷い罪悪感が胸を苛んだが、この程度、これからすることに比べれば序の口だ。アーチャーの気持ちなど気遣っていたら、ここから先には進めない。これから士郎は、彼にもっと酷いことをするのだから。
「桜。頼みがあるんだ。協力してほしい。」
 遠坂凛の右手。アーチャーの存在をより強固に定着させる為に、彼女自身が念入りに施した仕掛けが、死後もしっかりと令呪を留まらせていた。遠坂凛の愛の結晶ともいえる特別性の令呪。これが、遠坂家の魔術刻印と連動し、彼女の遺体に僅かに残されていた残存魔力をかき集め、アーチャーに注ぎ続けていた。だが、その効力ももうすぐ切れる。もう時間が無いのだ。


「アーチャー。」
 全てを終えた後、迎えの車に乗り込んだ桜を見送ると、屋根の上で佇む男に声をかける。かなり存在感の薄れた男は、音もなく士郎の前に降り立った。
「…桜は、」
「思った以上に負担が大きかったみたいで、今日はいったん帰るって。後のことは…また、明日ってことで。」
「…そうか。」
 つまり、遠坂凛の火葬は明日に延期になったということ。今日一日の猶予を察し、男は小さく息を吐く。すぐに男は士郎に背を向け、赤い聖骸布を翻して主の傍へと急いだ。
一方士郎は薄情な男の態度に腹を立てることもなく――アーチャーの士郎への態度はこれが普通なのだ――ゆっくり屋内へ戻り、玄関を施錠すると結界を内向きに張り直した。霊体であっても潜り抜けられないように、しっかりと。


→そのうち(2)に続くと思う。
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みねず あおい

Author:みねず あおい
日々の溜息と絶叫を綴っている日記(更新記録も此処)。史上最強の弟子や星矢Ωの感想を投下。最近はアンリミコミカライズの感想も書いてます。

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